揚巻は花道からの登場。少し酒に酔っているという設定で、この役の難しいところだとされる。江戸時代に酔いを醒ます「袖の梅」という粉薬が実在した。揚巻はそれを飲んで酔いを醒まそうとする。
満江からの手紙 [編集]
揚巻は手紙を渡される。差出人は助六の母・曾我満江(そがの まんこう)からで、廓に入り浸っている息子を何とかしてほしいと懇願する内容だった。本来は満江が実際に現れて揚巻に直接会って懇願するのだが、大正末期にはそれは廃され手紙だけになった。
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髭の意休と傾城白玉らが花道より現れる。意休は新人の遊女のことを話題にし、こんどあの娘を買おうという。あなたのような浮気者は、揚巻さんは嫌がります、と白玉は意休に注意をする。揚巻らと出くわす。助六の話題となった。意休は、揚巻をものにしたいが、揚巻は助六に夢中であることを知っており、それが悔しくてたまらない。助六が他人の刀(=腰のあたり、財布のある場所でもある)を調べまくっていることを話題になった。助六は泥棒だ。スリだ。泥棒男と一緒になって不幸になるつもりか、と意休は揚巻に言い放つ。揚巻は反撃して、意休本人を面罵する。有名な「悪態の初音」である。
「これからは揚巻が悪態の初音。意休さんと助六さんを並べて見るときは、こちらは立派な男振り。こちらは意地の悪そうな顔つき。たとえていわば「雪」と「墨」、硯の海も鳴戸の海も、海という字は一つでも、深いと浅いは客と間夫(まぶ=本命の男)、間夫がなければ女郎は暗闇、暗がりで見てもお前と助六さんを取りちがえてよいものかいナァ」。怒る意休。「うしゃがれ」と揚巻に悪態をつきふてくされる。そこへ助六が登場する。
助六が花道に登場。傘をさしている。傘を持って花道の上を踊る。おおよそ20分くらい延々と踊る。もっとも厳密には踊りであってはならず、「語り」でなければならないという口伝がある(九代目團十郎)。
助六が本舞台へ [編集]
ここで河東節の実演はすべて終了する。ここまでで幕が開いてから一時間経っている。女形が「やんや、やんや、」と褒めちぎり、助六は「どうでんすな。どうでんすな。」と得意満面で舞台中央に出る。
江戸町内の庶民は銭湯で入浴していた。大浴場に新たに入るときに、先客に対して「(自分の体は)冷えもんでござい」と挨拶するという礼儀があった。それを真似て助六は「冷えもんでござい」と言いながら長椅子に腰を掛ける。と、居並ぶ傾城十何人が一斉に「吸いつけ煙管(きせる)」を助六に手渡すではないか。次々と手渡される煙管を助六は両手で受け取る。意休はそれをじっと見ている。うらやましいのか。意休は居並ぶ傾城たちに、自分も吸いつけ煙草が欲しいと言うが、誰一人それに応じない。煙草はみな助六にやってしまったからだ。即ち、すべての傾城が、助六に対して間接的に接吻を望むのである。
「煙管の雨が、降?るようだ!」「(意休に対して)煙草の用なら一本貸して進ぜよう」 長椅子に腰をかけた助六は、なんと自分の左足の指の間に煙管をはさみ、意休にそれを吸わせようとするではないか。意休は動ぜず、反対に説教をする。助六はそれを聞かずに「エエ、つがもねえ」(初代團十郎の出身地・山梨県の方言)。反対に意休に対して、女に振られてもなお執着する姿は、あたかも蛇のようで気色が悪いとからかう。
くわんぺら門兵衛と福山のかつぎ [編集]
三浦屋からくわんぺら門兵衛が出てくる。彼は三浦屋の客で、大金にあかせて女を独占しようとしたが、実際には他にも客を取っていたことを知り激怒しているのだ。
花道から福山のかつぎが出てくる。うどん屋「福山」の出前持ちで、大きな出前箱を担いでいる。舞台の上でくわんぺら門兵衛と正面衝突し、言い争いになる。「ここなそばかす野郎め。タレ味噌野郎の、だしがら野郎め」 福山のかつぎはここで威勢のいい啖呵を切る。くわんぺら門兵衛は意休の子分であることを自ら明かし、長口上をぶつ。助六は、早くうどん屋を通してあげないと、うどんが延びるではないかとくわんぺら門兵衛に注意をするが、くわんぺら門兵衛はうどん屋を許さない。助六自身がうどんを買い取ることにする。
(かつぎに向って)「こりゃあ精進か(出汁に魚などを使っていないだろうな?)」「いえ生臭うございます(だしに魚を使っています)」「ご精進かは知らねども、わしが給仕じゃ、(くわんぺら門兵衛に向って)一杯あがれ」とやりとりあって、最終的に、うどんをくわんぺら門兵衛の頭からかけてしまう。くわんぺら門兵衛は自分の頭を割られたものと勘違いして、うどんを流血と取り違えて、こんなに血が出たと大騒ぎをしている。